コラム

心に残る歌声、または、童謡は退屈なのか

2024年3月26日

はなまるホーム十条

体操

「老人ホームに入ると、童謡ばかり歌わされる」――
歌わされる、という日本語のインパクトもさることながら、
世の中でまことしやかにささやかれる印象的なフレーズです。

はなまるホーム十条でも童謡はよく歌われます。
去年からとあるご利用者さまの娘様がいらっしゃり、
美空ひばりから文部省唱歌までご利用者さま達と
たのしく歌ってくださいます。
ヨガのボランティアさんがいらっしゃれば、
「かえるの歌」や「うさぎやかめ」を歌いながら体を動かします。
そのときご利用者さまの皆様は意外にも楽しそうな顔で、
大きな声で歌ってくださいます。

もちろん、皆様それぞれ異なる音楽の趣味をお持ちでいらっしゃいます。
銀座のジャズ喫茶に通い詰めた方、社交ダンス歴が30年にもわたる方、
旦那様をよそに「裕ちゃん」一筋の方もいらっしゃれば、
音大出身で歌謡曲(演歌でなく歌謡曲世代の方もまだまだ多いです)には
馴染みがない方もいらっしゃいます。

その中で童謡はどうやら共通の記憶として刻み込まれているようで、
昨日のことは忘れても、60年、70年前のことは容易く思い出せる。
「思い出せる」ことが、自信につながるのではないか、と私は考えています。
(余談ですが、童謡の歌い方を認知症、
特にアルツハイマー型認知症の方が容易く思い出せるのは、
昨日のことである短期記憶よりも昔のことである長期記憶、
また繰り返したことで体で覚えた手続き記憶のほうが
脳に残りやすいことからきていると思われます)

お年寄りが声を合わせて童謡を歌っている姿は画一的に思えますが、
もしかしたら、異なる趣味をもった様々な方の共通点が
表に出たものなのかもしれません。
童謡、意外に馬鹿にしたものではない、かもしれません。

はなまるホーム十条